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皆が避ける人の横に座って考えていた

今日の夕方に地下鉄の中で、知的障害者の傍に立っていた。
俗には「知恵遅れ」と言うらしい。

自分が意図して立っていたわけではなくて、
自分が先に乗車し、立って本を読んでいた時、
彼が入ってきて、すぐ近くの席に座ったのだ。

現れた時、彼は10冊ほどのノートの束を握っていた。
一番上と一番下のノートはもうボロボロで、
ノートの束の上には電卓を乗せていた。

彼はノートを大事そうに左手で掴んだまま、
リュックを足元に置いて、腰を下ろした。

僕は小説を読みながら、
彼から見て少し右側に立っている。
彼は、僕の正面に座っている青年(彼の隣りにいる)や、
窓の外を見ながら、際限なく何かを呟いている。
人によっては叫んでいるように見えるかもしれない。

地下鉄だから、窓の外はほとんど真っ暗である。
駅に着くたびに、彼は興奮したように何かを呟く。

隣の青年はずっと彼のことを気にしているようだった。
青年は自分の降りるべき駅につくと、
逃げるように扉の方に去って行った。

青年が去った後、僕の前の席が空いた。
僕は基本的に電車の中で姿勢を変えるのが嫌いなので、
座らずに、小説を読み続けた。

駅で人の乗り降りがあったけれど、
前の席は埋まらなかった。
電車の中でそこだけに異様なスペースがあった。

なんだかスペースがもったい無かったので、
目の前の席に座ることにした。
いつもは虫のように座席に食らいついている人たちが、
僕の目の前の席には座らなかった。とても不思議だった。

本当に不思議に思っていた。

僕が座って、小説を読んでいると、
彼は変わらず、僕の方向を向いて呟き続けた。

僕は彼の方を見ずに、呟きを聞きながら小説を読み続けた。

彼は「2チャンネル。NHK」とか日常の単語とか、
そんなことを呟いていたように思う。
足元のリュックのことは忘れているようで、
リュックは少し通路の中央側に移動して無視されていた。

彼の話や言動を聞いていると、
「僕とそんなに変わらないなぁ」という印象を持った。

テレビの話、日常の話がとりとめもなく出てきて、
足元のリュックのことなんか頭の隅に無く、
大事なノートは大事に掴んだまま。

「口に出す」以外は自分とやっていることはあまり変わらない気がする。
彼は「口に出せる速さ」で考えるだけだ。

僕が彼の方を見ないのは、他の人の目を見ないのと同じだ。
少しは緊張があったかもしれない。

でもそれは「自分を見る人は予想できない行動をするかもしれない」
といった誰にでも適用できる認識から生まれるものだ。

やはりなぜ、みんなが彼を避けるのかが分からなかった。
ひょっとしたら自分が避けられていたのかもしれないけれど。

僕もテレビのことを考えたり、
日常のことを考えたり、
女の子のことを考えたり、
遊びのことを考えたり、
ちょっと研究のことも考えたり。
あまり彼の口から出る思考と変わらないことを考えている。

むしろ、彼が言うことの方が本質を突いているのかもしれない。

僕が考えていることは
中学生の自分でも考えられるようなことがほとんどで、
それを考えることを未だに楽しんでいる。

大学院生の自分に対して、思考が遅れている、と言えるのかもしれない。
未だ、中学時代の回収をしている、と言えるのかもしれない。

自分の本来あるべき身分と中身が一致させられない。

世の中はもっと速い。

ただでさえ自分の認識に遅れが生じているのに、
それに対して容赦なく入り込んでくる。

それをうまく処理していかなければならない。

自分の処理ができないうちに、
新たな処理の必要性が迫ってくる。

それができる人はたくさんいる。
彼らからすれば僕は遅れているのだと思う。
それか、彼らは器用に無視しているのだと思う。

さっきの彼の知恵が他の人より遅れているのと同じように、
僕もあの人たちに比べて遅れているのだとも考えられる。
それか、僕が不器用なのか。

少なくとも、僕は、他の乗客よりも、彼に魅力を感じた。

「知的障害者」とラベル付けをされるような人たちは
今まで何十人か目にしてきたけれど、
彼には自分に似た個性を感じた。

彼からは素朴で、素直で、そしてとても「人間味」を感じた。

また彼の姿を見れないかなぁ。

彼の振る舞いや発言を見聞きすることを考えると、
どの電車でも聞ける機械のような会話を聞くよりもよっぽど心が躍る。


人のことは理解はできる。でも、納得のいかない時間だった。
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