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本当にこのマネジメントはニューウェーブだったんだなぁ

今日読んだのは
ニューウェーブ・マネジメント―思索する経営ニューウェーブ・マネジメント―思索する経営
(1993/03)
金井 壽宏

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「なんて革新的なマネジメント本だったんだろう!」
というのが正直な感想。

1993年の書籍であるにもかかわらず、
今でもなお「ニューウェーブ」であることを感じさせるような内容である。

逆に言うと、この17年間で日本のマネジメントの進歩の無さを、
身にしみて感じなければいけないのかもしれない。

それは、経営学が経営に寄与してこなかったことも原因かもしれない。
(それは経営学の責任でも、経営側の責任でもあるのだろうが)

昨日読んだ本の受け売りだが、
学問、というか科学には、疑似科学とは違い、
「知識の更新や進歩が見られる」。
(「知性の限界」p.142)

つまり、そのような精神を持っているし、
それが可能となるようなルールや仕組みを持っている。

日本では学問と経営が結び付かず、
各社が独自の方法論でマネジメントの手法を長らく継承してきたのだと思う。

だから「カイゼン」レベルでしか発展してこないし、
他者と比較しようにも、用語や文脈が違いすぎて比較できず、
それゆえ生産的な議論や刺激を受ける事が難しいのだろう。
(近年は産学が近接してきて、勉強会も盛んだし、
実際に企業を現場にした研究も増えてきた)

本書では様々なトピックに対して(学者であれば当然であるが)、
だれでも読めるような簡単な証拠・注釈が示されているため、
(逆に言うと、著者の意見がどれかも分かるようになっている)
どこまでが判明していることであり、
どこからが実務家個人で考えるべきことかが分かる。

古典的研究の著者による解釈・意見も
今見ても斬新で爽快さを感じるようなものである。

そして17年前のこの本の内容が、
現在の(日本の)マネジメントの主流になっていることに気付く。
「ニュー」ウェーブを正しく読んでいたのだろう。
本当に感服すべきことだと思う。

本書は昨日の本と同様に、「考える種本」である。

内容に関しては、47個のトピックに分かれているもので、
総評のようなものが難しいので、
特に引っかかったトピックについて考えを述べようと思う。
(見出しは全て僕によるもの)

・「例外による管理」と管理職の他者依存
・ミドルの仕事と課題
・ステークホルダーの効果
・ヒーローインタビューと帰属理論
・達人から学ぶこと
・アクティブリスニング
・個人と会社の自分探し
・生産⇔革新のトレードオフ
・ピグマリオン効果とその応用
・グループで考える事

まずは

・「例外による管理」と管理職の他者依存

旧来の経営管理論での基本的な発想は
「決められたことを決められた通り、
きちんと人びとにやってもらう」(p.26)ことである。

そして管理者について、

○階層が上位であれば知識の上でも優位
○曖昧さや驚きは、経営にあってはならない
○組織にたまった知識を利用する
○マニュアルで解決できないことが起きた時に
上に指示を仰ぐ(これが「例外による管理」)

といったようなものが前提とされている。

これは伝統的に正しいし、
効果も期待できる正当なマネジメント手法である。


しかし一方で、実際の仕事においては、
作業においても知識においても、
部下を含めた様々な人に依存していることは確かである。

○知らないことは知らないと自覚し、
○それを補うネットワークを作り、
○活動を通じて知識を生み出し、
○皆で一緒になんとかする

という形のマネジメントの方式が大事だと筆者は語る。


こういった記述を読んでいる時、
「これが93年に書かれたもの」だという考えは
完全に忘れてしまっていた。

ビジネス書や自己啓発書が好きな人には
「旬な考え」として「ネットワーク的思考」が
ビジネス書で取り上げられている現在と
言っていることはそう変わらないことが分かるだろう。


・ミドルの仕事と課題

ミドル(ミドルマネジャー)についての考察もふんだんに盛り込まれている。

少し前に
はじめての課長の教科書はじめての課長の教科書
(2008/02/13)
酒井穣

商品詳細を見る

などがベストセラーになり、
近年でもミドルマネジャーをターゲットにした勉強会も多く見られる。

本書ではミドルには上方(ミドルの上司)への影響力が大事だと説き、
それはミドル自身が
○防波堤
○翻訳者
○部下への配慮
の役割を担う必要があるからだと説く。

上司にとって「上司の上司へのモノ言い」が重要だというのだ。

一つ一つ説明すると、
上の人間でも間違ったことを言う。
そういうことが起こった時に上からの命を部下まで通さず、
防波堤になれるようなパワーが必要となる。

また、適切な事が降りてきたときでも、
部下のレベル、業務に応じて理解できるように
翻訳しなければいけない。

そして、現場に一番近い部下からの提案を
上に通すことができるパワーが無ければ、
部下が「自分は役に立たない」ということを学習してしまう。
そうならないような配慮として上方影響力は重要なのである。

このように、よりよいミドルにはパワーが必要であり、
それゆえにミドルの抱える課題は、
「必要な影響力と現在のパワーとのギャップを埋める事である」と説く。

そして、だからこそ管理者は派遣労働などという形が実現しにくい。
(現状を判断する力や政治・調整力、プロセスの知識等が必要だから)


・ステークホルダーの効果

日本語では「利害関係者」という
すこしネガティブなイメージがこもる訳になってしまう、
「ステークホルダー」に関してもこの当時から革新的な捉え方をしている。

曰く、
「ステークホルダーのもっとも重要な使命は、
社内にどっぷりとひたりきっている人びとに、
見えているつもりで見えていないなにかに気づかせ、
意思決定をより健全に保つことにある。」(p.84)

ステークホルダーを同等でかつ違う視点をもつ協力者、
著者の言葉で言うと「(より多くの)視点提供者」という捉え方をするのである。

ステークホルダー=利害関係者
と訳してしまうと捉えにくい考え方であると思う。

ステークホルダーの価値を示すために
著者は、分析してから戦略案を練り上げるという、
通常のプロセスをあえて逆転させるエクササイズを紹介する。

まず、
1.各ステークホルダーも管理者クラスなら
自分なりの戦略案を持っているはずだから、
気楽にいきなり案を出す。

2.参加者が多様だと、異なる戦略案が生まれ、
考える幅やアイデアのレパートリーが拡がる。

3.こうしなければ出なかった各戦略案の背景にある
声なき仮定を表面化させる。

4.どんなすぐれた政策決定者でも、
戦略の選り好みやバイアスがあることをよく自覚できる。

5.妥当性のない仮定がデータによって覆されるたびに
新たな戦略案を探求せざるを得なくなる。


本書は「インプットを揃えすぎると、アウトプット(戦略案)は似通ってしまう。
わざわざインプットを揃えて、戦略家の金太郎飴を作ることはない。」と言う。

これは様々なグループ活動で使える事ではないだろうか。
後にグループシンクについて述べるのでここ詳しくは書かないが、
「衆愚」に陥らないための一つの有効なワークである気がする。


・ヒーローインタビューと帰属理論

勉強会等で良くあるアイスブレイク(緊張緩和等のワーク)として、
トラストウォークや、ヒーローインタビューがある。

本書では後者を取り上げて、帰属理論と結びつけている。

本来は「今までで一番輝いていた時はいつですか?」
などとインタビューをして、自分の栄光の時を相手に話すことで、
気分が高揚するとともに、自信がつき、相手への親近感も醸成するワークである。

これを著者は本来とは全く違う使い方をする。

「さて、成功の理由を何に求めますか?」と。

「成功の原因は自分の側の努力や能力に
「内部」帰属される傾向があるのに対して、
失敗の原因は、自分のおかれた状況の側、
つまり課題の困難度や運に「外部」帰属される傾向がある。」(p.99)
と、良い気分のインタビュイーの頭を冷やすようなことを投げかける。

しかし、冷静になってみると、
インタビュイーが気持ち良くなる理由の一つも発見できるだろう。

帰属の癖、という就職活動ではなかなか気づけないような
自己分析の切り口を発見できるのである。


・達人から学ぶこと

学びに関しても、
まず一流の人から学ぶべきかどうか、
そしてどう学ぶべきかどうか、という問いを投げかける。

「学び方を学ぶ」という下手をすると循環論法になりそうな
繊細な概念を「二重ループ学習」に着陸させて、
一流からの学び方のヒントを与える。

一流の人が必ずしも教え上手ではないこと、
古来の研究でも同様の手法で作業の管理をしていたこと、
その上でどういう風に学ぶかということについて簡単に述べている。

言葉だけが独り歩きしがちな
「暗黙知」へのヒントがここにかたられている。


・アクティブリスニング

実はしっかりと課員の話を聞くことの効能が
古典的な研究でもすでに示されている、ということから始まる。

「しっかり聞く」ということは凄く効果的だが、
筆者もできないくらい(笑)難しいことでもある、という。

「非指示的な」(外部者による)面接法は
コーチングの元になっているものではないだろうか。

そして、十分理解されずに濫用されがちなコーチには、
当時の効果的であった面接法とその状況は重要なヒントになる気がする。


・個人と会社の自分探し

就職活動の変化によって、
「自己分析」「自分探し」という言葉がすでに広く浸透しているように思う。

他にも、モチベーション、内省などもよく扱われるトピックである。

それら重要だと思われる一方で曖昧で捉えきれないことについて、
17年前のこの書籍が述べている。

当時から「モチベーション=動機づけ」という訳に疑問を呈し、
内省と自分探しの意義について考えている。

「セルフブランディング」という考え方にも近いのかもしれない。

僕は当時の「自分探し」と現在の「自分探し」の意味は違うと思っている。
今は「自分探し」の思想が溢れすぎていて、
「自分探し(笑)」と表現されるような時代である。

当時のニューウェーブ(波)はπだけ振れたのかもしれない。
今では個人は自分を探しすぎないことが大事だと思う。
外にも沢山のヒントがあると僕は信じている。

話を戻す。
筆者の主張もこれでは終わらない。

これらの考えを著者は個人だけではなく、
企業にも重要なものだとしている。

「石鹸屋ではなく、清潔をテーマに事業をひろげる花王。
衛生陶器(例えば便器)でなく、環境美を提案し提供するというINAX。
複写機屋ではなく、ドキュメント・カンパニーを標榜する富士ゼロックス。
これらは、会社にとっての「自分探し」の例である。」(p.159)

僕は、この少し後に述べられている、
「戦い」のメタファーへの問題意識に感動した。

これは少し前からtwitter上で
ネットマーケティング系の人たちが議論してきたことである。
「戦争のメタファーは適切ではない」と。

著者もこんな昔に
「他者(他社)と比べないと見えない自分(自社)のあり方を探るだけでは、
自分探しのレベルが浅い。
それだとたとえば、センター試験にふりまわされる個人や、
シェア至上主義になってしまう会社から成る会社になってしまう。
そういう流れを変えよう。」
と提案している。

全くそうだと思う。

しかし、それが難しいことであることが
時間によってとても身にしみる事でもある。



・生産⇔革新のトレードオフ

この考え方も僕は感動した。

要するに、
「ドミナント・デザイン(支配的設計仕様)が決まるまでは生産性が上がるはずが無く、
ドミナント・デザインが決まって生産性が向上すれば、製品面の革新を犠牲にする」
という考え方である。

もっともなことである。
製品のかたちが決まるまでは革新の繰り返し、
製品のかたちが決まってしまえば、かたちの変更は許されないものである。

それを産業レベルだけでなく、
個人レベルでも組織レベルでも生じそうな話、だとし、
慣れ親しんだやり方を疑ってみることを提案している。

「自問してほしい。今の仕事のやり方で本当にいいのか、と。」(p.76)


・ピグマリオン効果とその応用

ピグマリオン効果

簡単に言うと、
「先生が期待した生徒は本当に成績が伸びる」という現象のこと。

ここで、著者の切り口が冴える。

「「できる」かどうかというのは、
その子に俗人的な客観的特性というよりも、
社会的リアリティだ、ということである。
つまり、客観的にはIQの高い子でも、
地味で埋もれていたら「できる」ということにはならない。」

と述べ、

「だから、教室のピグマリオン効果は、
小学校の低学年でより強く見られるようだ。
小学校でも高学年になると、
さらには微積分をやるような高校になると、
なかなか効かないようになる。
(中略)
しかし、おもしろいもので、学校を出て勤めをしだすと、
ふたたびピグマリオン効果の世界になる。
営業とか数字で結果の出る世界を除いて、
仕事の出来栄えの評価はしばしば漠としているし、
上司が褒めたからいい仕事ぶりだったと、
部下や部下の仲間は思う。」(pp.203-204)

という考察を展開していく。

ピグマリオン効果というものを知ると、
どうしても思考停止してしまいがちなところを、
筆者は「できる」ことを社会的なリアリティだとみなすことで、
疑う余地を投げかけている。

もちろん、ピグマリオン効果によって起こる現象、
なぜ「できる生徒」になるか、についても相応に評価した後で。

この記述には著者の多彩な視角が垣間見れる。


・グループで考える事

就職活動ではGDを行う企業も増えてきて、
グループで考える事に意義があるように思えてくる。

しかし、一方で「衆愚政治」という言葉も最近よく聞く気がするし、
自分でも「衆愚」を感じることがしばしばある。

はたして、集団で考えることは個人で考える事よりも良いことなのか。
チームワーク、グループという言葉に幻想を抱いていないだろうか。

先で述べた帰属理論にも関わるけれど、
「成功はチームワークのお陰」というのは本当か。

個人よりも集団の方が、危険感覚が鈍くなる。
(これを「リスキー・シフト現象」という)

昨日も一人が赤信号を渡りはじめると、
それにつられて複数の自転車が一気に渡ろうとする光景に遭遇した。

シュウカツのGDでも全てを賢そうな一人に任せようとする人がいるため、
一人で進めているのにコンセンサスを取る時間が無駄になることもしばしばある。

本書ではこのような状況に関する研究を挙げ、
「さまざまな決定場面で、個人では健全な疑問がストップをかけそうなことを、
浅はかにも周だ案ならやってしまうことが確認された。
ジャニスは、この現象をグループシンク(groupthink)と読んだ。」(p.70)
と紹介している。

また、別の箇所では
「ひとくちに「集団として決める」といってしまいがちだが、
どうすればみなで決めたことになるのかは、
手続き的にも実質的にもさほど自明ではない。」(p.210)
ということを明示し、その問題について考えるための事例を紹介する。

それは、メイアーの研究によって提唱された公式で、
「決定の有効性=決定の受容×決定の質」というものである。

「集団で決める」ということをもう一つ掘り下げる必要があるというのだ。

つまり、部下とともに決定をする、あるいは部下に任せる場面では、

「自分は、部下から反対されずに決めたことが、
みなに受け入れられるようにするために、彼らを参加させているのか。
それとも自分は、部下から学ぶことが大いにあると思って、
彼らに決定に参加してもらっているのか。」(pp.211-212)

と問うことが重要だと言うのである。

皆で決める、という価値は一つとは限らないのである。

なんでも集まって会議をする必要があるのか。
誰が集まればいいのか。
最終的にどのような参加形態を取ってもらうのがいいのか。

そのようなことを考えないと「話し合い」は「衆愚の原因」になるのかもしれない。



以上、10トピックについて述べたが、
他にも「ニューウェーブ」にふさわしいテキストに溢れている。

今では主流になっているトピック、
大きくなりすぎて今では逆方向が求められていそうなトピック、
注目されているが未だ主流になっているわけではないトピック、
さざ波に終わらなかった様々な「ニューウェーブ」で一杯である。


本書には
「経営学の際立った特徴は、実践との結びつきにあるので、
つねに新しい概念や手法がもてはやされがちである。
なかには、そのときどきの流行で終わるものがあるが、
時の経過が、流行に目のくもらない評価を可能にする。
しかし、美名の概念の場合にはなかなかそうはいかない。」(p.205)
という記述がある。


出版から17年経った今、
そして時代がこの本に追いついたことが分かった今、
この本が本当に評価される時が来ているのではないだろうか。



ふぅ。

6680字(笑)
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