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からっぽな街を歩いて

三宮の街が僕の頭をかき乱した。

自分の部屋に帰ってきてからも
何度も何度も街のことを思い出し、
眠りにつくことができなかった。

神戸には毎週通っているのだけれど、
大学がある六甲より向こうにはほとんど行かない。

何度か誘われて行くこともあったけれど、
何度行っても三宮はどういう街なのかが分からなかった。

だから自分から行こうとすることは無かった。

あの街に行く理由が無い。
ただ、行かない理由も無かった。

昨日も例にもれず、
三宮に行こうという言葉に従って三宮を訪れた。

駅に着き、商店街を歩いた。

いつもの駅前通り、相変わらず何も感じない。

街はまるでいくつかの街を切り貼りしたもののように感じた。
そこで楽しんでいる人たちは皆、どこかで見たことあるように思えた。

ぶらりと街を一通り歩き、
目当ての店でお腹を満たした後、
駅の方に歩いていく。

さっきよりも沢山の人が楽しそうに騒いでいる。

どこかでみたことのある服、
どこかでみたことのある表情、
どこかでみたことのある笑い声。

全てが何かの真似に見える。

三宮という街が分からない。
神戸という街はどういう街なのだろうか。

これで帰ってしまったら
また三宮が残らない気がして、
少し前に人から聞いた喫茶店に入る。

喫茶店は木の薫りが見えるような深い色の木の壁で、
一つとして同じものの無いカップがたくさん並べられ、
それらを包むかのようにレコードからクラシックが流れていた。

「いらっしゃいませ」

女主人らしき人がこちらに向かって声をかける。
マスターらしき男性は黙ったまま手を動かしている。
どこか寂しげで、なぜか機械的な作業に見えた。

「10時半で店を閉めますがいいですか。」

女主人が尋ね、僕達はそれでもいいと答えた。

ブレンドコーヒーを頼むと、
彼は僕達にあったカップを選び、
感情を殺しているかのような優しい手つきで
ただ丁寧にコーヒーを淹れてくれた。

何かの繰り返しのようだった。
繰り返すしかないようだった。

その空間には時間が無かった。
その場所だけが外から隔離されているようだった。
1枚のレコードを何度も裏返して聞いている気分だった。

そこには刺激が無かった。

それ以外に方法が無かった。

僕らしか人間がいないような心地がした。

彼らは無心に同じことを繰り返していた。
恐らく昨日も同じことをしていたのだろう。
そう思わずにいられなかった。

時間が止まった箱の中では、
話は凪のように静かで、
笑いの気配さえしなかった。
それは不快ではなかった。

その箱での最初で最後の驚きは
時間が過ぎていることだった。

彼がクラシックのレコードを整理するのを見ているうちに、
いつの間にか閉店時間になっていた。

やはり彼の手つきは機械のようだった。

外に出た。

外に出た場所が入る前の場所と同じとは思えなかった。
箱の中と空気が変わったことには気付いていたが、
出た時には中と外が同じ街であることにも気付いていた。

街全体が
何かの真似をしていて、
何かを繰り返していて、
何かを探しながらも、
自分を諦めている。

そんな気がした。

異人館、中華街、港町。

考えてみると三宮には根元が無い。

土に根付いた歴史が無い。

三宮らしさは全て外のものなのかもしれない。
それがモザイク状に敷き詰められている。

自分らしさが外にあることに気付いている。
自分を探そうとして、自分以外を繰り返す。

そこに背伸びと寂しさを感じているように思える。

どこか寂しげな面に、それぞれが何かの絵を張り付けている。

外に開いてもいないし、閉じてもいない。
誰が来ても、自分のために繰り返しているだけ。

自分がからっぽだと言うことを分かっていながら繰り返す。

少しずつ風化していくのに気付きながらも、
何かに従い続けていないと街が消えてしまうのだろう。

そう思わずにはいられない。

電車に揺られながらもずっと三宮が頭から離れなかった。

帰った後も、三宮は分からない。

それは今までの分からないとは違って、
分からないという印象を持つようになったということだと思う。

たぶん今日も明日も明後日も、
あの街は同じように回り続けるんだろう。

僕は、街に空があったかどうかも分からなくなるほど、
街の渦に巻き込まれてしまったようだ。

今は違う世界にいる気がして、
いまから本当に朝が来るかどうかさえ覚束ない。

なんだか少し眠くなってきたな。
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